なな色のお話達

思いついたままに

2016-01-01から1年間の記事一覧

その春風に吹かれて〜真奈編〜

運ばれてきたハンバーガーとポテトを目の前に 彼女は目を見開いた。 ゆっくりとポテトに手を伸ばすと、一本を手に取り口に運んだ。 「おいしいっっ!」 目を丸くして2口で一本を食べると、ふっと我に返った様に私を見て言った。 「これ、食べたことある?」 …

その春風に吹かれて(仮題)⑶〜真奈編〜

ー目が覚めなければいいのにー そう思って目がさめる。 また同じ1日の始まりだ。 部屋からでてみる。 親は帰ってきてない。 AM6:32 歯磨きをして昨夜コンビニで買った今朝用の パンを食べる。 流れ作業の様に無心で制服を着る。 居場所のない学校へまた今…

その春風に吹かれて(仮題)⑵〜栞編〜

ー最後の一枚のあの葉っぱが 散った時に 私の命も散るー 私は17歳。 本当だったら高校に通って部活したり 今日のことや明日のことをツイートしたり 彼氏とデートしたり、友達とマックに行ったり そんなことをして過ごしているのだろう。 それは完全に憧れだ…

その春風に吹かれて(仮題)〜真奈編〜

(電車の通過音) プファーンッッッ (遮断機の音) カンカンカンカン 踏切を超えることもできず、ただ遮断機の前に立っているだけだった。 ー自ら命を絶つこともできない。勇気もない。 私は自分の無力に脱力感しかなかったー トボトボと自宅のアパートに向かっ…

色の無い世界10 〜赤の妖精〜

赤いおじさんが僕の肩に腕を回したまま外へ出ようとした。ガチャッドアがまた開いた。スラッとしていて小顔でポニーテールをしているキリッとした目の女の子だ。僕より背が高い。その子は鋭い目でおじさんを見て言った。「誰?」「おかえり!アール!お前に…

色の無い世界⑨ 〜赤の妖精〜

ガチャッ赤いおばさんの家のドアが開いた。おばさんの家は真四角なのでドアが開くと誰が入ってきたかすぐに見える。今度は赤いおじさんだ。赤く短い髪。赤いメガネ。赤いTシャツに赤いサスペンダーをした赤いズボン。背は高く体型は普通。「お前はなんだ!!…

色の無い世界⑧ 〜赤の妖精〜

真っ赤な木のドア。金のドアノブ。僕は不思議と緊張とか不安とかはなく、 体全体で進むことしか考えていなかった。ママと番人が見守る中、ゆっくりドアノブを回した。回したドアノブをゆっくり押す。開いたドアの向こうは真っ赤な紅葉の森だった。ゆっくり一…

色の無い世界⑦

「じゃぁ、ママ!行ってくるね!!」スタスタとドアに向かう息子。息子のためらいの無さと反対に私はまだ頭の中で何も整理ができていなかった。息子に叫んだ。「コウ!あんた本気!?」息子は足を止めて、私のほうを振り返った。堂々とした真剣な眼差しは何…

色の無い世界⑥

番人は言った。「もしかして君、13才?」息子を見てニヤっと笑った。「はい。」息子は落ち着いた口調で答えた。息子の答えに番人は言った。「よし、決定だな!改めまして、僕はレインボードアのキーパーのパルです。この色の無い世界に色を取り戻す為に必要…

色の無い世界⑤

不思議だ。車を40分くらい走らせた。虹のふもとに来た。誰も見たことがないであろう、虹の端っこ。私と息子は山道に車を止めて、山の中まで歩いて入った。よく考えれば危険だが、それよりも不思議なことになってしまった。静まりかえった森の中。マイナスイ…

色の無い世界④

その日私は息子と買い物に出かけていた。車を運転していたら助手席の息子が大きな声を出した。「あ!‼︎」中学にあがり声変わりした息子の声はまだ聞きなれない。「なに!?急に!!ビックリするから危ないじゃない!!」私はハンドルを強く握り眉間にしわを…

色の無い世界③

友人と食事を済ませまた店に戻る。店内は白と黒の服しかない。元々はカラフルだったのに。「ただいまぁー」店内の奥で姪っ子がiPadで動画を見ていた。「あら、来てたの?」近くに住む妹が旦那さんと買い物にきていた。「おねぇちゃん!今 話してたんだけど、…

色の無い世界②

「今日、予約ある?ランチ行かない?」親友からのランチのお誘いの電話。旦那様に相談すると笑顔で行っておいで、と言ってくれた。友がお店まで迎えにきてくれたので車に乗り15分くらい走って知り合いのバイキングのお店へ。…うわぁ。全然美味しそうに見えな…

色の無い世界①

なにが起こったのかはわからない。目をさますと普段見慣れているはずの世界は白黒だった。昨日ネイルしたばかりの自分の爪。もらった結婚指輪。本当は綺麗な色なのに。テレビをつけてみた。最近お気に入りのポップなカラーのアニメも昭和のテレビみたいだ。…