なな色のお話達

思いついたままに

色の無い世界⑤


不思議だ。

車を40分くらい走らせた。

虹のふもとに来た。

誰も見たことがないであろう、虹の端っこ。

私と息子は山道に車を止めて、山の中まで歩いて入った。

よく考えれば危険だが、それよりも
不思議なことになってしまった。

静まりかえった森の中。
マイナスイオンと道なき道。

虹のふもとと思われる物は
地面からゆっくり上へカラーを放っていた。
大きさはわからないが、
横に見渡すと赤の色からオレンジ色にグラデーションになっている
ところまでの範囲が見える。

「ママ、この人たぶん虹の番人だ。」

白黒の森林の中で見つけた虹のふもとには
横たわった男がいた。
寝ているようだ。

ツバをゴグリと飲む。
緊張とドキドキと共に急に不安が襲ってきた。

旦那さんについて来てもらえばよかった。

2人だけで、危ない。
こんな森の中に!

私の不安をよそに
息子がその男に話しかけた。

「あの…すみません。」

息子は私より少し前へ出て
男を覗き込むように声をかけた。

ちょっと!!っと心の声と共に
息子の腕を掴んだ。

「大丈夫。本当にそんな気がするんだ。」

私の方を振り返り目をしっかりみてきた。
落ち着いた顔と声に
大人になっていく息子が見えた。

「あのう…」

息子がもう一度声をかけようとした時、
虹のふもとで横たわっていた男は
目をこすりながら起き上がった。

「あれ、どうしました?」

20代前半くらいに見える男は
全身毛むくじゃら。
人間の顔に猫の特殊メイクがしてあるように見える。
体や手や足も着ぐるみを着ているようだ。

でもちゃんと服はきている。

「あなたは虹の番人ですか?」

…おい、息子よ。
このおかしな光景に
その唐突な発言はなんだい。
どう見ても怪しい人だよ。
初対面だよ。

冷静に聞く息子に戸惑いと疑問と笑いを感じた。

「そうですよ。」

さっきまで横たわっていた獣男は
背筋をスッと伸ばし
微笑んだ。