なな色のお話達

思いついたままに

色の無い世界④


その日私は息子と買い物に出かけていた。

車を運転していたら
助手席の息子が大きな声を出した。

「あ!‼︎」

中学にあがり声変わりした息子の声は
まだ聞きなれない。

「なに!?急に!!ビックリするから危ないじゃない!!」

私はハンドルを強く握り
眉間にしわを寄せて言った。

「ママ!!ほらあそこ!!虹だ!!」

中学に上がっても
私と2人の時はママと呼ぶ。

「え!?どこ、?」

息子のほうをチラッとみると
助手席の窓の外を指差していた。

「ほら!あそこ!!」

土手沿いを走行中だったので
少し先の路肩に車を止めた。

息子に寄りながら指をさす方を見た。

「…どこ?」

指先と見比べてみる。

「まだ消えてないよ。あそこっ!山の間!」

山の間…
目を凝らしてみる。

ドクンッ!!

心臓に衝撃が走った。

「に、虹だ!!」

遠くの山と山の間に確かにうっすら
虹が見える。

「行くよっ!!」

私は何を思ったか
虹に向かって車を走らせた。

息子に方向を確かめてもらい
土手沿いから橋を渡り
山を目指した。

虹のふもとなんて
ないのだろうけど
私には希望だった。

本当は子供にしか見えないと
思われていた虹の話。

だけど確かにみえた。

夢中で無心で虹に向かった。