なな色のお話達

思いついたままに

色の無い世界⑦


「じゃぁ、ママ!行ってくるね!!」

スタスタとドアに向かう息子。

息子のためらいの無さと反対に私はまだ
頭の中で何も整理ができていなかった。

息子に叫んだ。

「コウ!あんた本気!?」

息子は足を止めて、私のほうを振り返った。

堂々とした真剣な眼差しは
何かが彼を一回り大きくさせていた。

「誰かが行かないと行けないんだよ。
それが僕なら、こんなに光栄なことはない。
ママ、前みたいなちゃんと色のある世の中で
暮らしていこう。大丈夫。
本当にそんな気がするんだ。」

普段の日常では何気ない普通の会話しかしていないから、こんなドラマのセリフのような言葉が出てくるなんて。

だけど、
私も感覚人間だからその根拠のない
「大丈夫」はよくわかる。
そう思うと何だか暖かい気持ちになった。

大人になったなぁ。

私の顔も少しほころんで
微笑みに変わっているだろう。

「自慢の息子だよ。気をつけてね。」

私がかけた言葉に
彼も微笑みながら、うなずいた。

虹の番人がコウをドアに誘導する。

これもまた、不思議な光景だ。

赤く、色はあるけど透けている虹に
赤い木のドアがついている。

コウはゆっくりドアノブを回しドアを開けた。

よく見えなかったけど、中も赤い色が見えた。

コウがゆっくり戸惑う様子もなく
入っていった。

夢でも見ているかのような光景に
何が何かわからず
ただ、見守るしかなかった。

ゆっくり閉まるドア。

本当にこれでよかったのだろうか。

バタン。

ドアが閉まりきったと思ったら
ドアも虹も消えた。

「では、僕の役目はここまでなので。
お会いできて光栄です。」

虹の番人が私に言った。
その瞬間、
人間の形をしていた体がシュルシュルと
小さくなって、
動物になった。

!?

その動物は猫みたいだけど
もう少し大きくて
なんか見たことあるけど…

その動物は私の目をジッと見つめた後、
ふっと山奥へ走っていった。



あ!!

ライオンの子供だ!!

こんな普通の山にライオンいるの!?