〜若さの秘訣の金曜日〜
ガラガラ
👩🏼「ハリちゃん、おまたせー!
ママ、こんばんわ( ´ ▽ ` )」
👵🏼「あら、ママちゃん!相変わらず細いわねー。いらっしゃい。どぉーぞ。」
👴🏽「あ、急にごめんなぁー、好きなもん頼みー」
一つだけ空いている一番手前の席に座る。
ここはカウンター小料理屋「そろそろ」。
年齢不詳のママ👵🏼が1人で街から少し離れたところで営業している。
カウンターは“コ”の字型になっており9席、
本日の一品が数点カウンターに並べられている。
サラリーマンの常連さんや近所の年配の方で
いつもカウンターはいっぱいだ。
たまに近所の奥様達の女子会ならぬ井戸端会議も行われている。
お店のメニュー以外にも、その時の旬なものや冷蔵庫の中のものでササッと出てくる、
おふくろの味とママの寛大な雰囲気が
人気の秘密。
👩🏼「じゃぁ、チューハイのライムとシャケのホイル焼きを」
👵🏼「はい。あ、ママちゃんこの里芋は皮を手でむいてから、塩で食べてね。」
さっそく本日の一品が。
小鉢で出てきた、少し小さめの茶色い皮が
ついた里芋。
皮をむくと、ほんのり紫色でツヤツヤした白が顔を出す。熱いと言うよりホクホクした里芋。別皿で出された塩につけて食べる。
👩🏼「おいしぃぃーっ!!」
ホクホクした口を両手で塞ぎながら、
眉間にシワを寄せ、ハリちゃんに目で訴えかける。
👴🏽「よかった、よかった、好きなもん頼みー!
ほら、これもつまんで。」
ハリちゃん👴🏽年齢不詳。ネジ会社の社長さん。
毎週金曜日にご来店頂くのだが、一ヶ月に1回は急なご飯の誘いがある。
いわゆる“同伴”。
ハリちゃんは基本的に金曜日はこの店で食事をしているようだ。
私の自宅から、街へ行く通勤途中にあるので
電車を途中下車すれば寄れる。
👵🏼「はい、おまたせー。」
元々は焼酎と別の飲料を炭酸で割っていたが、
最近の樽から注がれるタイプのものは焼酎ではなく、
基本的には蒸留酒で割るのがチューハイとなっている。
居酒屋に行くと、豊富なチューハイの種類にビックリする。
ビールをあまり飲まない私は一杯目をチューハイで乾杯することが多い。
👩🏼「いただきまーす」
すでに何杯目かになっている、ハリちゃんの焼酎とチューハイで乾杯。
その時、ハリちゃんの奥から視線を感じる。
ハリちゃんの隣のおじさん?おじいさん?がこっちを覗き込みながら、ハリちゃんの腕をポンポンとたたく。
👴「あんたぁー、こげな若いベッピンさん連れてええなぁ〜。ワシもこんなお嬢さんとご飯食べれたら、後20歳は長生きできそうやわぁ。」
ハリちゃんの背筋が少し伸びる。
👴🏽「そうなんですよ。
こんなじぃさんに付き合ってくれるから、
私もコレが楽しみで頑張ってますよ。
ハハッ」
友達の友達は皆友達とは言うが、
こんな感じの常連さんの多い店は、年齢層が高いのももちろんあるが、なんだか安心感がある。
👴🏽「ららちゃん、俺ね。
最近また歩くことを始めたんだけど、昨日は家からイオンまで歩いて往復したんだよ。
まだまだ、ららちゃんとこに行きたいから健康でないとね!
こんなハリちゃん素敵でしょっ!」
👩🏼「へー!すごい!結構、距離あるよね。
何にせよ、目標があると頑張れるし健康の為にはいいよね!私も何かしないとな。」
ヨガをはじめたものの、場所の距離が遠くて行くのが億劫になりすぐ断念。
ランニングをはじめたものの、雨が続きやる気が下がり断念。
縄跳びがいいと聞き、買ったものの
おっぱいが小さくなると聞いて断念。
結局何も続かないし定まらない。
低迷中。
👵🏼「はい、お待たせ、ホイル焼き。
ハリちゃんね、ここでいつもららちゃんの話ししてるのよ。姉妹のこと凄く褒めてるわよ。
ねぇ〜ハリちゃん!」
👴🏽「だってハリちゃん一途だからね!
こんなハリちゃん素敵でしょ!
んでまた妹も面白いんだよ〜」
ママの出してくれたホイル焼きは、シャケにキノコがのっていて、美味しそうに湯気が出汁がたくさん出ていた。
少しフーッと息を吹きかけて、しゃけとキノコを一緒に口にすると、
フワっと香る優しい秋の味がした。
少し前に起こった嫌な出来事が、胸をモヤモヤさせていたけど、スッととれた気がした。
心にしみる季節の味だった。
👩🏼「ハリちゃん、この間ねちょっと嫌な事があったんだけどさ。なんか、コレ食べたら
もういいやって気持ちになった。
自分も良くなかったなと思うし。
今日誘ってもらって本当によかった。
ありがとう。」
ハリちゃんはフッと微笑むと
👴🏽「そうやって、反省する事が大事なんだよ。みんな、色んな事があるけどね、
大事なのは自分の気持ち。
よし、頑張ろうっ!と気持ちを切り替えるように芯をシッカリさせてること。
俺だってまだまだ毎日勉強だから。」
何歳になっても
毎日勉強だと思っていると物事の見え方は
きっと違って見える。
👩🏼「自分の捉え方次第だね。」
👴🏽「そう、嫌だなと思う事があっても、
それも楽しめる、それがあったからこそ!
と前に進む。
そうやって毎日反省しながら、明日も
頑張る。
ハリちゃんは強気でいくよ!
こんなハリちゃんも素敵でしょっ!」
ホイル焼きのあまりの美味しさと
ハリちゃんの人生の教訓が
おもわず、
👩🏼「日本酒下さい、熱燗で」
とオーダーさせていた。
金曜日だから控えめにしとかないと、
先は長いぞっと思ってはいたけど
まいっか、と
その場を楽しむ私であった。
プルプルプル
👩🏼「あ、もしもし、ネネちゃん?
もう少ししたら、お店に行くから
シルバーシート空けといてねぇ〜」