なな色のお話達

思いついたままに

その春風に吹かれて(仮題)〜真奈編〜

(電車の通過音)

プファーンッッッ

(遮断機の音)

カンカンカンカン

 

踏切を超えることもできず、ただ遮断機の前に立っているだけだった。

 

ー自ら命を絶つこともできない。勇気もない。

私は自分の無力に脱力感しかなかったー

 

トボトボと自宅のアパートに向かって歩く。

 

私は17歳。

母子家庭で男好きな自由な母親と2人でくらしている。

とりあえずで進んだ高校もみんな上っ面な仲良しごっこに嫌気がさして、距離を置くようにしたら完全に無視されるようになった。

 

何のために生きているのか。

自分が何をしたいのか。

毎日、目が覚めなければいいのに…と

眠りにつくが朝はちゃんと目覚めて

学校に行く。

 

何かをされるわけではないが

学校に私の存在がないことの"無視"という

苦痛はもっとも酷いイジメだと誰もわかってはくれないだろう。

 

帰宅途中にある電車の遮断機の前に来るたび

何度も踏切を越えようと思うが

思うだけで体は動かない。

電車が通過するといつものように自宅に帰る。

 

ガチャっ

自宅のドアを開ける。

母親と2人で住む2DKのアパート。

この時間は母親が仕事の準備をしている。

お風呂上がりで下着姿で化粧をする。

ふた部屋を1人づつの部屋にしているが

親はいつもドアを開けっ放しにしているから

玄関から入ったらすぐにその姿が見える。

「おかえりっ」

母親は私を18歳で産んだから年齢的にも見た目もまだ若い。

「ただいま。」

「あ、真奈!今日、急に同伴になっちゃったから夜ご飯作る時間なくなっちゃって、悪いんだけどコンビニでお弁当にしてくれる?テーブルにお金置いてあるから。」

マスカラをしながら言った。

「わかった。」

私はキッチンのテーブルに置かれた千円札を確認すると、部屋に入った。

 

ー何の為に生きているんだろうー

 

特にしたいこともなければ

特に気になることもない。

親は1人の方がいんじゃないかと思う。

学校は私の存在はすでにないから

私の居場所なんてどこにもない。

 

制服のままベッドに横になった。

毎日こんなことの繰り返しだった。