なな色のお話達

思いついたままに

その春風に吹かれて(仮題)⑶〜真奈編〜

 

ー目が覚めなければいいのにー

 

そう思って目がさめる。

 

また同じ1日の始まりだ。

部屋からでてみる。

親は帰ってきてない。

AM6:32

歯磨きをして昨夜コンビニで買った今朝用の

パンを食べる。

流れ作業の様に無心で制服を着る。

居場所のない学校へまた今日も向かう。

 

無気力

脱力感

空虚感

 

すべてシックリくるワードだが引きこもりに

なる勇気もない。

結局、何にも出来ないんだ。

 

何にも感じないまた同じ1日を過ごす。

 

今日も無視され続け誰とも会話する事なく

1人で行動し1人で下校する。

 

また踏切の前に立つ。

今日は何だか踏切を越えれそうな気がした。

一歩づつ踏み出す。

 

カンカンカンカン

電車が近づいてきた。

 

『もういいよね…』

 

頭の中を母親や学校の友達がよぎった。

 

悲しいとかよりも安らぎを感じた。

 

遮断機をくぐろうとした時だった。

 

「オイッッ!!」

声と同時に手首を掴まれ引っ張られた。

 

ドンッと尻餅をついた瞬間、目の前を電車が走り去った。

 

「大丈夫ですか?!」

振り返ると、ハァハァと息を切らした男の老人が私を引っ張った様だ。

 

私はまた生かされた。

今度は人の手を借りて。

 

「お名前は?」

今度は明らかにその男の老人とは違う若い女の声がした。

振り返ると、綺麗な黒髪で色の白い私と同じくらいの女の子が立っていた。

 

「申し訳ありません、

栞様、すぐにお車に戻りましょう。」

老人が言った。

「待って、よかったらご自宅までお送りするから、乗って」

知らない人にはついて行かないって

子供の時から大人達に言われてきたけど

この場合はどうなのかな。

もうどうでもいいか。

そんなことを思いながら、助けられた老人の車にその女の子と乗った。

こうゆうのって多分テレビとかでしか見たことないけど、お嬢様と運転手なんだろうな。

本当にこんな子いるんだ。

 

思わずついて来て車に乗ってしまったけど…

 

「お家はどこ?」

「あ、ごめんなさい。歩いて帰れるから…」

車から降りようとすると、女の子に

引き止められた。

「待って!ちょっとお話しできる?

田所!1番近くのマックに入って!」

 

マック…

お嬢様から意外な場所が出て来た。

マック行くんだ…

 

マックに入ることになった。

運転手のおじいちゃんは車で待っているらしい。

お嬢様は早歩きで入り口へ向かった。

「いらっしゃいませ〜ご注文がお決まりでしたらどうぞ〜」

お嬢様はキョロキョロして今月のオススメの写真が1番大きなメニューを指さした。

「ダブルBBセットですね!お飲み物をこちらの中からお選び下さい。」

意外と食べるんだな…

私はコーラの単品だけにした。

運転手にもらったお財布からお金を払っていたがお嬢様は基本的にお金を使わないんだろうなと思った。

おつりをもらわず席にいこうとした。

 

席に座るとお嬢様が言った。

 

「あー。緊張したー、実はマック初めてなの!

まだドキドキしてる!うまくできてた?初めてって思われたかな?」

私にはすごく新鮮だった。

マックに当たり前の様に来ていたから。

ただ彼女を見つめた。

「ごめんなさい。お名前教えて!」

「真奈。」

「マナ!私は栞(しおり)。マナ、さっきはどうしたの?」

私は少し目線をそらした。

「いや、ちょっと立ちくらみがして…

運転手さんが助けてくれなかったら

電車にひかれるところだったね。

本当にありがとうございます。」

「田所は運転手というより私の執事なの。

私も田所も通りかかった時になぜか踏切の前に立つマナが気になったの。田所はすぐに車を止めて走って行った。マナ…本当は…」

「お待たせいたしました〜」

タイミングよく注文していたものがきた。