なな色のお話達

思いついたままに

色の無い世界10 〜赤の妖精〜

赤いおじさんが僕の肩に腕を回したまま
外へ出ようとした。

ガチャッ

ドアがまた開いた。

スラッとしていて
小顔で
ポニーテールをしている
キリッとした目の女の子だ。

僕より背が高い。

その子は鋭い目でおじさんを見て言った。

「誰?」

「おかえり!アール!お前に大事な話がある!
座れ!」

おじさんの口調はちょっと怖い。

赤いおばさんも
テーブルに座ったまま
ニヤっと意地悪な微笑みをしてコッチをみている。

みんなでテーブルを囲んで椅子に座る。

テーブルも正方形だ。

アールはジッとおじさんを見て言った。

「何?」

口調はクールだが
サバサバした感じが僕はなんだか
いいなって思った。

アールのほうに腕を組みながら
前のめりになったおじさんは真剣な顔で言った。
さっきの怒鳴り声とは違う低い声だ。

「ついにあの日がきた。
お前はコウと今から虹を渡る。
お前がやるんだ。」

アールはハッとした表情でおばさんを見た。

おばさんはアールを見てうなずいた。

目をまたおじさんに戻す。

おじさんの表情は柔らかくなっていた。

それから…

僕と目があった。

一度目をそらし、うつむいた後
スッと顔を上げて言った。

「コウ、私はアール。よろしくね。
赤い国から始まるんだから
もちろんリーダーはわたしよね。」

僕はリーダーなんて考えもしていなかった
から

「う、うん」

すぐに返事した。

「さーて!出発の準備をするわよ!
食料と飲み物と…」

おばさんがササッと動き始めた。

おじさんは席を立って外へ出て行った。

アールも席を立ってバックに荷造りを始めた。

そういえば、
僕は何にも持ってきていないな。

「あのー、おばさん。」

「ん?」

「僕、何にも持ってきていなくて、その…」

「あー!大丈夫!一緒に用意してるから!」

「あ、ありがとうございます。」

赤の人達ってあんまり説明しなくても
すぐに理解してくれるし
テキパキしているな。

おじさんが戻ってきた。

「コウ!こいっ!」

僕を外へと呼んでいる。

僕は席を立って外に出た。

赤い自転車が2つ並んで置いてあった。

マウンテンバイクのようだ。

「かっこいいだろ!乗っていけ!」

おじさんは僕の頭を撫でながらいった。

「え?!いんですか?ありがとうございます!」

僕がおじさんを見上げると、
おじさんはニッコリして
手に持っていた赤いキャップを
僕にかぶせてくれた。

「お前!赤、似合うな!」

そういえば、僕の服装は
白いTシャツにグレーのパーカーに
黒のデニムパンツだ。

アクセントの赤が効いているようだ。

「被ってけ!」

おじさんはキャップもくれた。

僕はニッコリして
頭を下げた。

「じゃぁ、行くわよ。」

アールとおばさんが出てきた。

アールが僕に赤いリュックをくれた。
荷物が入っているようだ。

アールも赤いリュックをからっている。

アールは自転車の前に立つとクルッと振り返り
おじさんとおばさんを見て言った。

「行ってきます。必ず役目を果たしてきます!」

女の子なのに、キリッとした目の力強さと
たくましさをまとっている。

「おう!お前なら大丈夫だ!
責任を持って行動するんだ!
危険なことには気をつけろ!
女の子なんだからな!」

「しっかりね!愛してるわ、アール!」

僕も2人に頭を下げた。

「ありがとうございました!
いってきます。」

2人共、自転車にまたがると
アールが先頭で出発した。

森から続く道に出て、森とは反対に進む。

前を走るアールのポニーテールが
風になびいていた。

その後ろ姿は女の子だった。